不審者対応訓練は年何回が目安?学校・施設・職場別に失敗しないポイント
不審者対応は、
現場の誰かが「たぶん大丈夫」と
迷った数分で状況が変わります。
だからこそ必要なのが、
不審者対応訓練で初動を標準化すること。
本記事では、声かけの基本、110番・119番の通報要点、
避難とロックダウンの設計、役割分担の作り方までを、
学校・施設・職場別に分かりやすく整理します。
不審者対応 訓練とは?目的と基本フローを最短で押さえる
不審者対応訓練は、偶発的なトラブルを「手順で制御」するための練習です。ポイントは勇敢さではなく、初動の迷いを減らすこと。合図・通報・避難の型を揃えるほど、被害は小さくなります。
不審者対応訓練が必要な理由:被害を減らすのは「初動の標準化」
被害を広げる原因は、判断の遅れと情報の混乱です。訓練の目的は、現場で誰が見ても同じ動きになる状態を作ることにあります。例えば「発見したら距離確保」「合図で一斉に連絡」「誘導は決めたルート」のように、手順を短文化します。学校なら文部科学省の学校安全資料で示される考え方に沿い、施設でも同様に動線へ落とし込むのが実務的です。
「不審者」の判断軸:行動・場所・時間で見極める
不審者の判定は見た目ではなく行動で行います。判断軸は主に3つです。1つ目は行動(執拗な付きまとい、無断撮影、物を隠すなど)。2つ目は場所(立入禁止区域、バックヤード、教室前の徘徊)。3つ目は時間(閉館後、登下校時間帯の境界など)。訓練では「グレーな来訪者」も扱い、受付での確認とエスカレーションの線引きを決めると実効性が上がります。
初動3分の鉄則:距離確保・合図・情報共有
初動は3分で勝負が決まります。まず距離確保。相手の手が届く範囲に入らず、遮蔽物や退避経路を背にします。次に合図。館内放送、内線コード、チャット定型文などで「いま何が起きているか」を短く共有します。最後に情報共有。場所、人数、特徴、凶器の有無、進行方向だけを伝え、推測は混ぜない。訓練ではこの3点を反復し、手順を体に覚えさせます。
110番・119番の使い分けと通報テンプレ
原則は、犯罪・暴力の恐れがあるなら110番、負傷や救急の必要があるなら119番です。通報の型を固定すると、緊張しても伝え漏れが減ります。
- 場所:施設名、住所、目印、入口
- 状況:不審者の行動、凶器の有無、負傷者の有無
- 進行:現在地、移動方向、人数
- 連絡:通報者氏名、折返し番号、待ち合わせ場所
救急対応が必要な場合は、119番で指令員の指示を受けながら動けるよう、AED位置や応急手当の担当も決めておきます。
避難とロックダウン:誘導ルートと待避場所の決め方
避難には「外へ出す」だけでなく「中で守る」もあります。ロックダウンは、危険区域を隔離し、教室・事務室・バックヤードなど安全な区画で待避する方法です。施設の動線図に、避難ルートと代替ルート、集合場所、鍵のかかる部屋、死角を明記します。学校なら教室内待避の手順、商業施設なら客導線の分離を軸に設計します。訓練では、放送が聞こえない場面も想定し、合図の複線化が有効です。
役割分担の作り方:指揮・通報・誘導・記録
当日うまく回るかは、役割の固定で決まります。最低でも指揮、通報、誘導、記録の4つを置きます。小規模現場は兼務で構いませんが、誰が何をするかを一枚にまとめます。
| 役割 | 主な行動 | 代替(不在時) |
|---|---|---|
| 指揮(現場責任者) | ロックダウン/避難判断、情報集約 | 副責任者 |
| 通報担当 | 110/119、所轄への連絡、受け入れ誘導 | 受付担当 |
| 誘導担当 | 利用者・児童の誘導、点呼、扉管理 | 班長 |
| 記録担当 | 時刻、出来事、判断理由、写真の可否 | 事務担当 |
訓練で守るべき配慮:刺激を抑えつつ実効性を上げる
訓練は安全が最優先です。凶器を模した小道具や大声での演出は、必要最小限にします。特に子どもや不安が強い利用者がいる現場では、事前告知の仕方、見学参加の選択肢、終了後のフォローが重要です。訓練の目的は恐怖を与えることではなく、行動の型を身につけること。文部科学省の学校安全の考え方にならい、心理的負担にも配慮した設計にします。
訓練前の準備:マニュアル・体制・設備を整える
訓練は当日だけ頑張っても成果が出ません。事前準備で「迷いの発生源」を潰すことが重要です。動線・鍵・連絡・判断権限の4点を揃えると、訓練の密度が上がります。
危機管理マニュアルの整備:現場の動線に落とし込む
マニュアルは文章だけだと形骸化しがちです。施設図面に、入口、受付、立入禁止、鍵の管理者、放送設備、避難先を落とし込みます。学校であれば、文部科学省の「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」等を参考に、来訪者の確認手順、教室内待避、職員の配置を具体化すると作りやすいです。更新は年1回ではなく、配置換えやレイアウト変更のたびに行います。
連絡網と指揮系統:誰が最終判断するかを固定する
混乱時に最も起きやすいのが、判断が二重になることです。最終判断者を1名決め、代替者も決めます。連絡は、内線、放送、無線、チャットなど複線化し、定型文を作ります。
例:コードA(不審者)、場所(1階受付付近)、行動(入室要求)、対応(ロックダウン準備)
また、所轄警察署や施設管理者への事前相談を行い、通報後の待ち合わせ場所も決めておくと現実的です。
設備・備品の点検:鍵、インターホン、掲示、避難誘導具
設備は、使える状態でなければ意味がありません。点検項目を最低限に絞り、月1で回せる形にします。
- 鍵:施錠できる部屋、マスターキー管理、鍵の所在
- 入口:インターホン、受付対応の視認性、来訪者記録
- 誘導:避難掲示、誘導灯、非常口の塞がり
- 連絡:放送の聞こえ方、電波の死角、予備バッテリー
防犯アイテムは、持つこと自体より「どこにあり、誰が使い、使わない判断は何か」を決めるほうが重要です。
訓練シナリオの作り方:学校・施設・職場別に設計する
シナリオはリアルさより再現性が大切です。毎回違う話を演じるより、同じ型を反復して改善点を潰すほうが効果が出ます。まずは3本だけ作り、回しながら磨きます。
学校・保育施設:来訪者対応と教室内待避を軸にする
学校は来訪者対応の入口が要です。受付での確認、名札・来訪記録、案内の動線を固定します。不審者の侵入を想定する場合は、教室内待避(施錠、カーテン、姿を見せない、点呼)と職員の配置を訓練します。文部科学省の学校安全サイトや危機管理マニュアル資料にある緊急対応例を参考に、放送文と合図を短くしておくと混乱が減ります。
病院・商業施設:利用者が多い前提で「分離」と「誘導」
利用者が多い施設は、全員を一斉に逃がすほど混乱が増えます。危険区域を分離し、逆流を止める扉管理が重要です。誘導は「出口へ」より「安全区画へ」が先になる場合もあります。通報担当は、施設の入口を開けたままにせず、警察の到着動線を確保します。館内放送は過度に刺激しない表現で、短い指示に統一します。
オフィス・工場:受付・入退室管理と区画封鎖を強化
オフィスや工場は、入退室管理の精度が安全の土台です。受付での確認、ICカード、来客エリアの分離を徹底します。訓練は、バックヤードへの侵入を防ぐ区画封鎖と、在館者の安否確認を中心にします。フロアごとの責任者を決め、点呼の方法(名簿、アプリ、班別)を固定します。夜間や少人数時の体制も、別シナリオとして用意します。
当日の実施手順:声かけから避難・確保まで
当日は、完璧な演技よりも「手順どおりに動けたか」を重視します。開始前に安全ルール、合図、終了合図を共有します。訓練中の無理な接触や追跡はしない前提で進めます。
発見と声かけ:距離・遮蔽物・複数対応で安全を優先
発見した人は単独対応しません。可能なら2名で対応し、1名は距離を取りながら通報・連絡へ回ります。声かけは丁寧に、しかし境界は明確にします。
例:「こちらは関係者以外立入できません。ご用件を受付で伺います。」
相手が興奮している場合は説得より距離確保。退路を塞がず、相手を追い込まない。危険が高いと判断したら、即時に合図とロックダウンへ移行します。
退避誘導と情報共有:合図の統一と誤情報の抑制
誘導担当は、指示を一つに絞ります。二つ以上指示すると従えない人が増えます。
- 指示は短く:「こちらへ移動」「その部屋へ入る」「扉を閉める」
- 情報は事実だけ:場所、進行方向、禁止区域
- 合図は統一:コード、定型文、放送文
また、SNSや個人連絡で情報が拡散すると混乱します。訓練でも「情報発信は責任者から」のルールを確認し、外部連絡は一本化します。
事後対応:けが人対応、保護者・顧客対応、記録の残し方
終了後は、けが人の有無を確認し、必要があれば救急要請と応急手当へ移ります。119番通報時は指令員の指示に従い、AEDの位置や担当を明確にします。学校なら保護者への連絡文テンプレ、施設なら顧客対応の案内文テンプレを用意しておくと、二次混乱を抑えられます。記録担当は時系列で残し、改善に直結する事実(扉が閉まらない、放送が聞こえない等)を拾います。
訓練後の振り返りと改善:チェックリストで継続する
不審者対応訓練は、1回で完成しません。改善点を次回に反映し、少しずつ現実に近づけます。評価は減点方式ではなく、次に良くするための材料集めとして行います。
振り返り会の進め方:良かった点を残し、課題を絞る
振り返りは15〜30分で十分です。最初に良かった点を3つ出し、次に課題を3つに絞ります。課題は「次回までに直せるか」で分けます。
- すぐ直せる:定型文の修正、掲示の貼り替え、鍵の置き場所
- 時間がかかる:入退室設備、放送設備、動線改修
最後に担当者と期限を決め、改善が実施されたかを次回の冒頭で確認します。
研修の定着:新人・非常勤・委託先まで巻き込む
実際の現場は、全員が訓練に慣れているとは限りません。新人、非常勤、清掃・警備など委託先まで含めて、最低限の共通理解を作ります。短時間のミニ訓練(10分)を月1で回すと定着しやすいです。たとえば「合図の確認」「鍵の場所」「避難先の確認」だけでも効果があります。外部講師として所轄警察や地域の安全担当に助言をもらうのも実務的です。
年間計画と外部連携:所轄警察・施設管理者と定期見直し
年間計画は、目的別に分けると回しやすくなります。
- 春:役割分担と連絡網の確認(配置換え対応)
- 夏:動線・設備点検とロックダウン訓練
- 冬:混雑時(イベント・繁忙期)想定の誘導訓練
所轄警察、施設管理者、ビル防災センターなどと連携し、到着動線や鍵の扱い、来訪者管理の運用をすり合わせます。継続的な見直しこそが、訓練を実戦力に変えます。
まとめ
不審者対応 訓練で最も大切なのは、
勇敢さではなく初動の標準化です。
距離確保、合図による情報共有、110番・119番の通報要点、
避難とロックダウンの判断を手順化し、
指揮・通報・誘導・記録の役割を固定すれば、
現場の迷いが減ります。
訓練は一度で終わらせず、
振り返りで課題を3つに絞って改善し、
年間計画で継続してください。
まずは連絡網と鍵の管理、放送文の定型化から着手するのがおすすめです。
文部科学省:学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル(PDF)
文部科学省:学校安全(不審者侵入の防止と対応)
文部科学省:学校の危機管理マニュアル関連資料(PDF)
総務省消防庁:119番通報とAEDの依頼(応急手当)
政府広報オンライン:住まいの防犯対策(不審時は110番の趣旨を含む)